ロヒンギャ難民への残虐な殺戮、ロヒンギャ難民女性や少女への性的暴行、などが焦点の一つとして世界のメディアで取り上げられ、非難が集まった。スー・チー氏は、2016年後半より明らかになった、軍によるロヒンギャ女性に対する多数の性的暴行疑惑について、口を閉ざしていた。ノーベル平和賞も受賞したスー・チー氏にも批判が向けられている。
2018年12月 ミャンマー 2020年の総選挙を控え抗議運動が加速
長年に及ぶ軍事政権支配から数十年ぶりに文民政権が誕生し、民主制に向けて移行するミャンマー。
2020年には総選挙がある。かつてはスー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)を軸に結集していた活動家のあいだで、亀裂が拡大する事態になっている。
スー・チー国家顧問は現在も多くのミャンマー市民からしっかりと支持を受けているが、支持派であったが信頼を失って反対派へ変わった人も多い。そして若い世代からの抗議運動が政権の新たな課題として浮上。その原動力は、政権によるムスリム系ロヒンギャ民族を含む少数民族への扱い、メディアや市民社会への抑圧に対する怒りである。
・ロヒンギャ難民への政府の対応
ミャンマーはロヒンギャ難民が告発している残虐行為のほぼすべてを否認しており、軍は合法的な対テロ作戦を実施したと述べている。
・ミャンマーで多数派を占める仏教徒の意見
その多くはロヒンギャに対して批判的だが、若い世代の活動家からは少数の同情的な声がある。
「実際に起きたことについて、確認も処罰も行われた形跡が見られない」「人々が彼らを人間以下の存在だと見ており、彼らを殺しても罪ではないと考えている限り、難民は戻ってこないだろう」「私たちはロヒンギャを受け入れている。彼らが『ベンガル人』と呼ばれている事実はまったく受け入れがたい」…ロヒンギャ族がミャンマーで長年暮らしてきた歴史があるにもかかわらず、バングラデシュからの侵入者という意味で「ベンガル人」という呼称が一般的に用いられている状況がある。
・国際的な批判
スー・チー氏は軍を統制する権限を持っていないが、少数民族ロヒンギャへの保護を怠ったことに対する批判が浴びせられている。国連機関によれば、2017年に西部ラカイン州に起きた軍による徹底的な取締りによって、73万人以上のロヒンギャが国外に逃亡している。この取締りはロヒンギャ反政府勢力が治安部隊を襲撃したことへの対応として行われた。
・政権が抱える現状
「ジェノサイドの意図を伴う民族浄化」と国連に批判された少数民族ロヒンギャに対する軍弾圧への対応や、民族主義武装勢力との和平協議の不調、そして経済の停滞
・活動家による批判「文民政府がますます独裁的になっていて、反体制派の弾圧に使われていた植民地時代の法律を廃止せず、市民社会に対する締め付けを厳しくしている」「センシティブな問題を掲げることは禁止されており、デモ参加者は逮捕され、殴打される」「国民民主連盟は、民主を名乗るのであれば、民主主義と人権を尊重しなければならない」2018年も何度も抗議活動が行われた。
・ミャンマーの若い世代
若い世代の活動家はミャンマー社会のなかでは小さな一部分でしかないが、彼らの抗議行動や公式コメントはメディアやソーシャルメディアにおける多数のフォロワーから多大な注目を集めており、草の根運動における影響力を増しつつある。
ミャンマーの若年人口(大半が20~30代で中央年齢は27歳)と、高齢化した指導層(60~70代の男性が中心)との間には大きな隔たりがあると、違法デモの容疑に問われている青年活動家は指摘する。ヤンゴンの政治アナリストは「ミャンマーは非常に保守的な国だが、こうしたヤンゴン出身の若い世代は、それに挑みつつある」と述べている。
参考:ロイター通信 https://jp.reuters.com/article/myanmar-activists-idJPKBN1O40S3
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