●概要
財政赤字を抱える米国で、トランプ大統領は、大統領選中から公約していた「メキシコ国境の壁」の建設費として50億ドルを、予算に盛り込むことを要求してきた。これを含まない予算と壁建設費用を含む予算をめぐって議会与野党が対立。民主党が壁建設費用を含むことに反対している。上院が延長法案を可決したもののトランプ大統領がこれを拒否し下院は可決しないうちに、21日には下院で壁建設費用を含む予算案が可決された。12月22日午前0時、壁建設費用を含まない予算が期限切れで失効したため米国政府機関が一部閉鎖された。
2019年1月13日時点でも閉鎖は解かれず、予算失効に伴う政府機関閉鎖は過去最長となっている。職員数十万人が無給で勤務を続けており、また一時帰休をしなければならなくなった職員も多い。アメリカ市民にも不安が広がっている。
●失効したつなぎ予算…トランプ大統領の求めている50億ドルの壁建設費等を含んでいない。連邦政府の業務の約25%について、現行水準の支出の継続を認める内容。国土安全保障省・司法省・商務省・内務省・農務省などのつなぎ予算も盛り込まれている。
2018年9月26日に可決された歳出法案に含まれている。期限12月7日→12月21日に延長された。しかしこのつなぎ予算を2019年2月8日まで延長するか否かという法案の審議が12月19日に開始され、上院で可決されたがトランプ大統領が拒否し下院で可決されず、12月21日期限切れで失効した。
●現在協議中のつなぎ予算案…壁建設費用を含んでいる。
12月20日に下院で可決されたが上院で可決されていない。民主党が壁建設費用を含むことに反対しており、政府機関閉鎖のなかトランプ大統領と協議中。
〇2018年9月18日 米上院で12月7日までのつなぎ予算を盛り込んだ大型歳出法案を圧倒的多数で可決。このときにもトランプ大統領はこの歳出法案にメキシコとの国境の壁建設費用が盛り込まれていないことを「ばかげている」「民主党が壁建設を阻止しようとしている」と批判し、建設費用を確保できなければ政府機関の閉鎖も辞さないという考えを表明していた。9月末までに下院で可決されなければ予算失効で政府機関閉鎖の可能性があった。
〇2018年9月26日 下院でも可決。トランポリン大統領も11月6日中間選挙までは閉鎖回避に協力する姿勢に転じた。「我々は政府を閉鎖させない。」
・中間選挙
民主党が下院の多数派を奪還。2019年1月3日から下院の多数党となる。
共和党は上院の多数派を維持。(ねじれ)当選議員は2019年1月1週目に就任する。
〇2018年11月13日 米議会が再開 「レームダック」
この会期の焦点は歳出法案であると見られ、一部の予算が執行する12月7日までに両院で可決されなければ政府機関閉鎖に至る。
〇2018年12月6日 つなぎ予算は7日に失効予定だったが議会で可決。トランプ大統領も署名。期限は21日。
〇2018年12月18日
トランプ大統領「様子を見よう。まだ早すぎるので分からない。国境警備は大切」
民主党シューマー上院内総務Twitter かつてトランプ大統領は壁建設費用を払うのはメキシコだ。と強調していたが、今壁代を払うのは誰だ?アメリカの納税者だ。
〇2018年12月19日 連邦政府機関の閉鎖回避のために、つなぎ予算(12月21日に失効する予定)を2019年2月8日まで延長する法案を米議会で審議開始。
…延長されると、トランプ大統領の求めている57億ドルの壁建設費等を含んでいないまま、2019年2月8日までの支出を手当てするつなぎ予算となる。連邦政府の業務の約25%について、現行水準の支出の継続を認める内容。国土安全保障省・司法省・商務省・内務省・農務省などのつなぎ予算も盛り込まれている。
・大統領 あらゆる連邦政府機関に使える資金がないか点検するよう要請
・民主党 大統領の壁建設費用を予算を自在に付け加える権限はない。ナンシー下院内総務「お金の無駄遣い」
→〇トランプ大統領は、壁建設費用を含まないつなぎ予算の延長法案を拒否。
〇2018年12月20日 下院で、メキシコの壁建設のための予算50億ドルを盛り込んだつなぎ予算案を可決。
同日、トランプ大統領は上院共和党議員と会合したがうまくいかなかった。
・会合前のトランプ大統領Twitter「民主党がNOに票を投じれば、政府機関は長期にわたり閉鎖される。」政府機関の閉鎖は「民主党に非がある」「民主党は壁が国境警備に必要であると分かっていながら政治を使いごまかそうとしている。」等
→民主党上院議員「政府機関の閉鎖はトランプ大統領に責任がある。」「今日もしくは来週、さらに民主党が年明け1月3日に下院を掌握した後、あなたが壁を手に入れることはない。」
・国境警備関連費用として16億ドルを予算案に盛り込む案が討議されているという。
〇2018年12月21日 米国上院は、メキシコの壁建設のための予算57億ドルを入れたつなぎ予算案を可決できなかった。22日午前0時の予算案失効を控え、議会とホワイトハウス幹部が協議したが、民主党・共和党・トランプ大統領が受け入れることのできるような妥協案が見いだせず議会は散会した。
・トランプ大統領Twitter「閉鎖となる。民主党が投票しない以上他に方法はない。閉鎖が長く続かないよう望む。」
〇2018年12月22日 午前0時、米連邦政府の一部予算が失効。このため米国で政府機関が一部閉鎖された。
●影響
連邦政府職員の15%、80万人に影響する。職務遂行に不可欠な42万人の職員は予算合意まで給与の支払いを待ちながら働かなければいけなくなる。
・国土安全保障省 閉鎖の影響あり 大体の職員は当面無償で勤務
・住宅都市開発省 一部は勤務を続け、また約1000人が当面無償で勤務の可能性。住宅市場への影響を避けるため臨時対応措置が取られるが、閉鎖が長引けば住宅販売が減少しかねない。
・内務省 管轄している国立公園局は最小限度の人員のみ勤務、国立公園は全て閉鎖される。アリゾナ州・ニューヨーク州は州が資金を拠出して運営を続ける。
・運輸省 2/5の職員が休みに入る。連邦航空局は大半が勤務を続ける。連邦高速道路局は財源が異なるため影響を受けない。
・大統領府 予算執行などについて大統領を助ける行政予算管理局(OMB)職員の大半を含む、職員1100/1800人が休みに入る。
・商務省 経済分析局と国税調査局は閉鎖中は経済指標を公表しない見通し。
・2019年1月3日、労働省は12月末に一週間の失業保険申請数が1万件増えたと発表したが、これに政府職員の一時解雇は関係していないとしている。
・在日アメリカ合衆国大使館のホームページも閉鎖されている。
〇2019年1月8日 閉鎖18日目 トランプ大統領 就任以来初めて、大統領執務室からテレビ演説。壁建設は「拡大する人道と安全保障上の危機」を食い止めるために不可欠だと強調し、議会に予算措置を求めた。
〇2019年1月9日 閉鎖19日目 連邦政府の再開についてトランプ大統領が野党・民主党幹部と協議。民主党側が壁建設費用の承認を拒否したため、大統領は「バイバイ」と言って退出。
一時解雇状態の政府職員と無給で働いている政府職員は全体で約80万人になる。
トランプ大統領のテレビ演説、メディアのトランプ大統領批判、民主党との対立など深刻化。
〇2019年1月10日 トランプ米大統領はダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)を欠席することを公表。
また「国境の壁」建設費用の捻出に民主党議員らが同意しなければ、国家非常事態宣言を出して対処する意向を再び示した。
議員らとの協議が成果を上げられなければ、国家非常事態宣言を「多分、出すだろう、確実に出すとほぼ言える」とした。
〇2018年1月11日 閉鎖21日目
・トランプ大統領 非常事態宣言の用意は急いでおらず「議会が責務を果たすことを望んでいる」
・空港にも影響
米国内で14番目に混雑する空港、米フロリダ州マイアミ国際空港は、一部ターミナルの運営時間を今後数日間短縮すると発表。給与支払いが止まる中、保安業務を担当する米運輸保安庁(TSA)職員の欠勤が増えているため。
*参考
ロイター通信
・米上院、つなぎ予算含む歳出法案を可決 政府機関閉鎖回避へ前進 https://jp.reuters.com/article/usa-budget-senate-idJPKCN1LY2UB
・トランプ氏、歳出法案「ばかげている」 壁建設費欠如批判 https://reut.rs/2NuhdTN
・米大統領、歳出法案に署名する意向表明 政府機関の閉鎖回避へ https://reut.rs/2IjJnLy
・米「レームダック」議会再開、予算やロシア疑惑捜査など審議へ https://reut.rs/2FlxmYf
・「完璧な国境警備」含まない法案に署名しない=トランプ米大統領 https://reut.rs/2rN47Uv
・米つなぎ予算失効し政府が一部閉鎖、週末も与野党協議続く https://reut.rs/2EIEqwM
・米政府機関の閉鎖リスク浮上、「国境の壁費用」巡る予算攻防で https://reut.rs/2LtLDRZ
・米つなぎ予算失効し政府が一部閉鎖、週末も与野党協議続く https://reut.rs/2EIEqwM
・情報BOX:米連邦政府機関の一部閉鎖、各省への影響は https://reut.rs/2TaTAxU
・米商務省、閉鎖中は経済指標を公表しない見通し=WSJ https://reut.rs/2EQ8Qxl
・米新規失業保険申請件数増加、基調は底堅く https://reut.rs/2s7l0cA
・トランプ米大統領、非常事態宣言「急がず」 議会の行動見極めへ https://reut.rs/2VKX8t1
・2019年1月12日 米政府機関閉鎖、空港運営に影響 マイアミで保安職員の欠勤増加https://jp.reuters.com/article/usa-shutdown-airports-idJPKCN1P52EZ
BBCニュース
・12月19日トランプ氏、壁建設めぐる政府閉鎖の脅しを取り下げ https://www.bbc.com/japanese/46615491
・1月9日 トランプ氏、国境警備に「物理的障壁」は「当たり前のこと」
https://www.bbc.com/japanese/video-46805958
WSJ
・2019年1月12日 米政府機関閉鎖、空港運営に影響 マイアミで保安職員の欠勤増加https://jp.reuters.com/article/usa-shutdown-airports-idJPKCN1P52EZ
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